月灯りの下の猫

雲がところどころ区切れてきた
外からの風が急に冷たくなってきて
ベランダに出て空を見上げると
ポッカリとお月さまが顔を出していた

「あっお月さまこんばんわ」

半分だけ明かりを灯した月が
街に光を降り注ぎはじめた

「もう半分は自ら灯りを」

部屋に灯りをつける
街の全てが半分の光を自ら灯し
温かさに包まれた

僕は外に出てお月さまを見上げた
ふと気づくと
月灯りの下に猫たちが暮らしていた

「君たちはここで生まれてここで暮らしているの？
　お月さまが出ているんだ
　半だけ明かりを灯してくれるんだ
　後の半分は........」

その時自転車に乗った男性が現れた
自転車を停めるとフェンスをヒョイと乗り越えて
猫たちの水を取り替えご飯の用意をしていた

ご飯に群がる様子もなく
ボーっと空を眺め公園を眺めている猫たちがそこに

「どの子か懐いてき猫はいた？」
「あっ....いいえ　僕　初めてだから」
「そっかぁ　今....1，2，3，4，5匹」
「あそこにも白い猫がいるよ」
「そうそう白い猫が　あいつと他にまるまるしたのと
　時々茶もキジもいっぱいいるんだよ」
「へぇ......」

水の取り替えが終わると自転車に乗って去っていった

「君たちの半分の明かりはもらえたようだね」

僕は腰を上げてその場を立ち去り
電信柱によじ登りお月さまに声をかけた

「お月さま
　ほんの少しだけ
　あとちょっとだけ近づいて
　あの子たちに明かりを灯して下さい」

月灯りの下
猫たちに
少しだけ光が多く降り注がれた気がして
僕は家に向かって歩き始めた